地域の皆さまに寄り添った法律事務所

弁護士ノート

東日本大震災から10年に寄せて

その他

藤です。

まもなく東日本大震災から10年が経とうとしています。

私は、東日本大震災発生当時、東京におり、数日後に大学の卒業式が予定されていました。家の中の物が落ちた程度で、幸いにも家族に人的な被害はありませんでした。地震の大きさもさることながら、ニュース映像を通して伝えられたその後の津波、原発事故は今でも鮮明に覚えています。

震災直後の4月から法科大学院に進学したタイミングということもあり、自分のことで精一杯で、被災地の復興に何も貢献しなかったという気持ちが、その後も心のどこかにありました。

そんな思いもあって、司法修習(司法試験合格後、法曹資格を得るための教育制度)の実務修習地として、福島県を希望の一つに選択し、約10か月を福島市で過ごしました。震災から約5年が経過していましたが、まだ仮設住宅には多くの避難者が生活し、避難指示が解除されていない地域も多くありました。

まだまだ自分にも何かできるのではないかと思い、県内での就職を希望し、2016年12月、浜通り法律事務所に入所しました。

当初は、原発事故被災者向けの相談会に行けば、1日の相談枠(6枠)が全て埋まるということも珍しくありませんでした。また、東京電力に対する住居確保に係る請求が始まって間もないこともあり、避難先に家を買い求める避難者の相談が多かったように記憶しています。

ここ1、2年は、相談会が予定されていても、相談予約がなく、キャンセルになるということもあります。しかし、賠償に関する相談会を開催する必要性がなくなったかというと、そんなこともありません。一定数の相談予約はあり、先週の復興公営住宅での相談会では、飛込み(事前予約なし)での相談が2件ありました。もうすぐ震災から10年を迎えますが、いまだに初めて相談に来たという避難者の方もいらっしゃいますので、相談会など、定期的に避難者の方の話を聞く機会をもつことの重要性を感じます。

県内の応急仮設はほぼ撤去され、復興公営住宅へ避難先を移した方も多くおります。しかし、復興公営住宅は、入居から3年が経過すると、一定の収入がある入居者に対し、家賃が増額されるため、増額を機に、転居を考えているという話も聞くようになりました。ここ数年で、避難指示が解除された地域のインフラは整備されてきましたが、まだまだ住民の帰還は進んでいません。特に、避難指示が解除されていない地域を抱える自治体の居住率は、震災前と比較して1割程度です。

今後も、帰還するか移住先を探すかの岐路に立つ避難者が多くいると思いますが、弁護士として、その決断の一助になれるよう、日々の業務に取り組んでまいります。(藤 健太)