弁護士ノート
次の10年へ
その他
2010年、私たちはいわきで開業しました。「浜通り法律事務所」という名前に、日々の生活の中でトラブルに巻き込まれた「浜通り」の住民の方々のお役に立ちたいという想いを込めました。
翌年、東日本大震災と原発事故が起こりました。あれから10年間、事務所の名に恥じないよう、その時々の課題に取り組んできました。
いわきに本拠地をおいているという立場から、様々なご縁によって復興関係の仕事に関わってきました。復興とは何か、何がゴールなのか、そもそもゴールなどあるのか、弁護士として何ができるのかについて、正解を求めたい気持ちを抱えて10年を過ごしました。
震災から10年を振り返る情報に触れると、復興に向けて走り続け、今も同じ熱量で走り続けることが難しくなっていると感じます。10年の間に、復興に対するほんのわずかな意見の相違により分裂や亀裂が起こり、それによって復興そのものを考えることから心が離れてしまった人もいるのではないでしょうか。
いわきは、避難してきた方が多くお住まいです。いわき市民は地震や津波、原発事故の被害に遭ったという立場と、避難者を受け入れる立場を併せ持つこととなっています。その立場の複雑さが、被害の程度や復興のあり方をより複雑にしていると思います。
それでもまた次の10年という時は流れます。浜通りの復興はまた道半ばです。複雑に絡み合ってしまった糸に目を背けずほぐさなければ、前に進めない時期に来ていると思います。この10年間で多くの出会いがあり、得難い経験をさせていただきました。その経験を活かして、弁護士として法律的な観点からサポートをすることで、絡まってしまった糸を一つ一つほぐすお手伝いをする決意を胸に、次の10年を歩んでいきたいと思います。(松本三加)